この記事では、総合食品卸だからこそ知っている食肉の雑学をお届けします。
今回のテーマは「豚肉」。日常ではなかなか耳にしない話を集めてみました。
食肉の知識が深まるのはもちろん、お客様との会話のネタにも活用できるので、是非ご覧ください。
国産豚肉の等級ってどうやって決めているの?
国産牛肉の等級は広く知られていますが、実は国産豚肉にも等級があります。
では、どこでどのように決められるのでしょうか。
まず、国産の豚肉の商流から見ていきましょう。養豚所で育てられた豚は、屠畜場へ運ばれ、屠畜・解体が行われます。解体され、枝肉(※1)になった豚肉は市場に運ばれ、セリにかけられて価格が決まり、仲買人、食肉加工業者を通り、お客様の元へ納品されます。
等級が決まるのは、市場でのセリの段階。
まず初めに、枝肉の重量と背脂の厚さで極上・上・中・並の4等級に分けられます。
〈重量及び背脂肪の厚さの範囲(皮はぎの場合)〉
極上:重量73kg以上81kg以下/背脂1.5cm以上2.1cm以下
上 :重量68kg以上83kg以下/背脂1.3cm以上2.4cm以下
中 :重量63kg以上78kg未満/背脂0.9cm以上2.7cm以下
重量78kg以上88kg以下/背脂1.0cm以上3.0cm以下
並 :重量63kg未満
重量63kg以上78kg未満/背脂0.9cm以上2.7cm以下
重量78kg以上88kg以下/背脂1.0cm以上3.0cm以下
重量88kg超過
※公益社団法人日本食肉格付協会『豚枝肉取引規格』(https://www.jmga.or.jp/standard/pork/index.html)より
その後、形の良さや肉付きなどの外観、肉の締まりや肉色、脂色などの肉質を加味して、最終的に「極上」「上」「中」「並」「等外(※2)」の5段階で格付されます。
(※1)頭や内臓、四肢の先端を取り除いた骨付きの肉。
(※2)「極上」「上」「中」「並」のいずれにも該当しないもの、外観又は肉質の特に悪いもの、黄豚又は脂肪の質の特に悪いものなどが等外になる。
豚肉にしかない!? 輸入時にかかる『差額関税制度』とは
牛肉・豚肉・鶏肉・羊肉など、日本に輸入される食肉には様々ありますが、その中で豚肉にのみかかる特別な関税があります。その名も『差額関税制度』。
これは、輸入豚の価格が低い時は基準輸入価格に満たない額を関税として徴収して国内の生産者を保護し、逆に輸入豚の価格が高い場合は低い従価税を適用して消費者の利益を図るというもの。
基準輸入価格とは、差額関税制度において課税額が最も低くなる分岐点価格(524円)に従価税を足した価格です。2024年度の従価税率は0.7%なので、基準輸入価格は527.67円になります。
例を挙げて整理します。基準輸入価格を528円/kgとすると、輸入価格が400円/㎏の場合は528-400=128円/kgの関税がかかり、600円/kgの場合は600×0.7%=42円/kgの関税がかかるということになります。
※ただし、TPP協定が締結されたことにより、2027年に分岐点価格より安い時の税は50円/kgに統一、高い時の税は撤廃されて無税になります。
輸入されている豚ガラはゲンコツだけ?
差額関税制度は「肉」にかかる関税で「骨」にはかかりません。
豚ガラは、豚頭・ゲンコツ・背ガラ・腰骨・バラ骨に分けられますが、この中で、キレイに骨だけに出来るのはゲンコツだけ。そのため、唯一安価で輸入することができます。他のガラは肉を取りきれず、差額関税がかかってしまうため、高価になってしまいます。
こうした理由から、基本的に輸入されている豚ガラはゲンコツのみということになります。
SPF豚=無菌豚は勘違い
よく耳にする「SPF豚」は、無菌豚と混同されることがありますが、完全な誤解です。
SPF豚は、日本SPF協会認定の農場で育った豚のこと。このSPFはSpecific Pathogen Freeの頭文字を取ったもので「特定の病原体を持っていない」という意味です。豚の慢性疾病(※)を排除し、健康な豚を飼育することを目的としています。
対して無菌豚は、研究所などの特殊な装置の中でしか飼育する事ができないため、一般に流通することはありません。
SPF認定農場は、原種豚を生産する農場(GGP農場)、原種豚を導入し種豚を生産する農場(GP農場)、種豚を導入し肉豚を生産する農場(CM農場)の3つに分けられます。GGP農場からCM農場まで一歩通行でなければならず、外部からの豚の導入も厳しく制限されます。また、それぞれの農場は確実な防疫体制や厳格なヘルスチェックをはじめとした、数多くの基準をクリアしていなくてはなりません。そのため、認定農場になるには膨大な設備投資額がかかります。
日本SPF豚協会のHPによると、現在SPF認定農場産の豚肉は、国産豚全体のうち10%程度(推定値)とされています。希少性のある豚ですが、病気になるリスクが一般豚に比べて極めて低いので、生産効率が高く、安定的に出荷することが出来ます。
※日本SPF豚協会は「萎縮性鼻炎」「豚赤痢」「オーエスキー病」「トキゾプラズマ感染症」「マイコプラズマ肺炎」の5つの疾病を規制対象としている。
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いかがでしょうか。
食材について新しい知識を得ると、その食材を試してみたくなるもの。お客様との会話をきっかけとして販売促進に繋がれば幸いです。
今後も肉の雑学も紹介していく予定なので、ご期待ください。