昔から食中毒は、飲食店にとって火の不始末と並んで特に注意が必要とされてきました。21年6月に「飲食店におけるHACCPに沿った衛生管理の義務化」が始まり、社会的に食への安全意識は高まっていますが、依然として飲食店での発生は途絶えていません。
原因菌・ウイルスは様々ありますが、飲食店において特に気をつけたいものの一つが、カンピロバクター。今回は、カンピロバクターの特徴や発生しやすい状況とともに、対策を紹介します。
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【カンピロバクターとは】
食中毒を起こす病原菌。主に牛、豚、羊、鶏などの動物の消化管内に生息しています。少量の酸素がある環境下で増殖するという特徴があり、逆に酸素が十分にある環境や、酸素が全くない環境では増殖できません。また、増殖できる温度域は、30℃から46℃です。
7割以上が飲食店での発生事例
厚生労働省のHP(https://www.mhlw.go.jp/index.html)では、国内で発生した食中毒に関わるデータ(※1)を毎年発表しています。
令和4年度の食中毒発生事例は、966件。このうち、最も多かった食中毒の病因物質はアニサキス(566件)。次いでカンピロバクター(185件)、ノロウイルス(63件)と続きます。
この上位3種の原因物質のうち、カンピロバクターは約76%が飲食店で発生した事例。アニサキス、ノロウイルスは飲食店以外でも多く発生していますが、カンピロバクターだけが飲食店での発生が多いというデータが出ています。
では、なぜカンピロバクターは飲食店での発生が多いのでしょうか。
新鮮な鶏肉でも
カンピロバクター食中毒の原因食品として、飲食店で提供された生・加熱不十分の「鳥刺し」「鳥たたき」「生レバー」などが多く報告されています。
カンピロバクター菌は湿潤な環境を好み、鶏の腸管内に生息している菌。食鳥処理施設で、短時間に大量の鶏解体を行う過程で、カンピロバクターが食肉に付着する可能性があります。つまり、鮮度のよい状態であっても「生で食べても安全」ということではありません(※2)。
ドリップにも要注意
飲食店で、調理に使用した包丁・まな板や、生肉を触れた手から他食材へ感染する交差汚染が数多く報告されています。
カンピロバクターは、他の食中毒菌よりも感染力が強い菌。
鶏肉自体は加熱調理により殺菌されていても、気づかないうちにドリップが付着し料理全体が汚染されてしまう場合があります。
カンピロバクター食中毒の予防法
厚生労働省のHPでは以下の予防法(※3)が記載されています。今さらと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、改めて確認しましょう。
【調理時】
・充分な加熱調理(中心部を75℃以上で1分間加熱)をする。
・食肉と他の食材で調理器具(包丁・まな板・保存容器など)を分ける。
・食肉を取り扱った後は充分な手洗いをする。
・調理器具は使用後、洗浄・殺菌を行う。
また飲食店では鍋料理など、加熱前の鶏肉を提供することもあるかと思います。
その際の注意点は下記になります。(東京都保険医療局のHPより)
【鍋物や焼肉などの提供時】
・食肉や野菜は充分な加熱をするよう促す。
・生肉を扱う場合の箸・トングと、食事用の箸を区別してもらう。
・生肉と他の食材とを別にして提供する。
まとめ
鶏肉は、季節やジャンルを問わず様々なメニューで活躍する優れた食材です。しかし提供機会が多くなればなる程、カンピロバクター食中毒への対策徹底が必要です。HACCPに沿った衛生管理のもと、「十分な加熱調理」と「交差汚染の防止」を徹底し、安心・安全な料理を提供しましょう。
【参考関連リンク】
※1 厚生労働省 食中毒統計資料 令和4年(2022年)食中毒発生状況
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html#j4-3
※2 東京都保険医療局 知って防ごう カンピロバクター食中毒
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin//campylo/report2a.html
※3 厚生労働省 カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html