飲食店が最も避けたい事態「食中毒」。
飲食店のHACCP義務化により、食中毒リスク軽減の取組は広がっていますが、食中毒の発生は途絶えていない(※1)のが実情です。
それでは、なぜ食中毒は発生するのか、改めて見てみましょう。
厚生労働省が公表している資料によると、2023年、飲食店で発生する食中毒の原因で最も多かったのは、お客様が口にする料理に付いた細菌(※2)です。
そして、細菌が付きやすく、繁殖しやすいのが、生肉。この生肉を切るのに使用した包丁・まな板や、生肉を触れた手から他食材へ感染する、いわゆる交差汚染が実は数多く報告されているのです。
今回取り上げるのは、食中毒の原因になりやすいまな板。基本的な扱い方や効率的に衛生管理できる手段などを紹介します。
基本的なまな板の扱い方
『HACCPの考え方に基づく衛生管理のための手引書』(公益社団法人日本食品衛生協会)に掲載されているので、ご承知の方も多いとは思いますが、まな板は「肉や魚などの用途別に使い分け、それらを扱った都度に十分に洗浄し、消毒する」のが基本です。
つまり、扱う食材ジャンルの数だけまな板を用意して使い分け、また、使うたびに洗浄・消毒することが推奨されています。
では、まな板の洗浄方法は。
1.温水で下洗いした後、中性洗剤を使用して洗う
2.よくすすぐ
3.乾いた清潔なダスターで拭くor 清潔な場所で乾燥
4.アルコール製剤で消毒
となります。
洗浄の際の留意点としては、まず、まな板に傷がある場合は、傷に菌が入り込んでいる恐れがあるので傷目に沿って洗浄すること。また、側面・裏面も洗浄すること。の2点が挙げられます。
ここまでは、使用の都度行う洗浄方法。
1日の業務が終わった後は、上記の工程の2と3の間に
塩素系漂白剤に30分程度浸した後、水でよくすすぐor熱湯や煮沸などで加熱殺菌する
という作業も必要になります。
効率化できる手は?
食中毒を未然に防ぐために手間を惜しむことは出来ませんが、少しでも効率化できる手段があれば、採り入れたいところ。
例えば、用途別に使い分けるのが基本と上述しましたが、もっと細かく言えば加熱食品・肉・魚・野菜、さらに肉は牛・豚と鶏とで分けるのが理想です。
これだけのまな板を用意するなら、まな板自体を色分けすれば、どの食材用なのか一目瞭然になるので、作業中にまな板選びで迷う時間はなくなります。
カラーバリエーションが豊富なまな板が販売されているので、買い替えの時は用途別に色分けすることも含めご検討をオススメします。
ただ、作業台のスペースの問題でまな板を何枚も置けないという場合もあるかと思います。そんな時に役立つのが、まな板の上に置く薄いシート「まな板シート」。使い捨てのタイプもあるので、うまく活用しましょう。
まな板は、調理になくてはならない道具ですが、同時に食中毒の原因にもなりえます。
お客様に笑顔で帰っていただくために、お店を長く続けるために、まな板を衛生的に保つ配慮を欠かさないよう心がけましょう。
※1)厚生労働省,“令和6年(2024年)食中毒発生事例(速報)”. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html.(参照 2024-3-5)
※2)厚生労働省,“令和5年(2023年)食中毒発生状況”. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html.(参照 2024-3-5)