トムヤムクン、ガパオ、パッタイ……。1990年代、日本で初めてブームが起きたタイ料理。30年の時が経ち、今やスーパーの総菜コーナーに並ぶほど、すっかりお馴染みとなりました。
外食においても、選択肢の1つとして完全に定着していますが、その一方でタイ料理というだけでは差別化を図るのが難しくなり、店ごとの個性が必要な時代となっています。
そんな中、渋谷店・三軒茶屋店・学芸大学と飲食店ひしめく地域で3軒を展開しながら、すべての店舗で高い集客力を持つ店があります。
『本格タイ料理バル プアン』です。
その強さの裏側には、優秀な人材を確保するための工夫がありました。
【取材協力】『本格タイ料理バル プアン』 タイ料理をバルスタイルで提供。黒板に描かれるチョークアートとタイの伝統模様が調和する内装が特徴的。本格的なタイ料理はもちろん、タイから取り寄せたワインやウイスキーなども取り揃えている。 |
高いリピート率の要因
『プアン』で腕を振るうのは、いずれの店舗でもタイ人のシェフ。本格的な味付けが特徴で、グルメサイトの口コミ投稿を見れば、満足度の高さが伺えます。
数多くある口コミ投稿のほとんどは、料理の味に関するものですが、中には「次は本格的なメニューを…」「次は何を食べようかな」といった次回の来店意欲を感じるコメントを見ることができます。
『プアン』は、豊富なメニュー数も特徴。例えば、ランチメニューだけでも、レギュラー16種に加えて日替わりも提供しています。お客様は、その日食べた料理の美味しさから、他メニューへの期待を高め、再訪の動機を強めているようです。
挙手性でメニュー開発
では、その豊富なメニューラインアップはどのように開発しているのでしょうか。代表取締役の加瀬正和様に伺いました。
「挙手制でシェフからメニューを募っています。作りたいメニューがあれば、日替わりや週替わりで出してみて、お客様の反応が良ければ継続という形ですね。ただ、よく出るのはガパオとかパッタイなどの定番です。知らない料理を注文するのって、お客様にとっては冒険じゃないですか。なので、メインメニューが入れ替わることはほとんどありません。それでも、シェフだって作りたいメニューを作る方がモチベーションは上がりますよね」
腕の良い料理人たち
加瀬氏がシェフの提案を積極的に受け入れられるのは、料理の腕に絶対の信頼があってこそ。
「基本的にレベルの高い方を採用しています。ウチのシェフは、料理人としてのキャリアが20年以上ある人ばかりですし、募集する時は料理のテストもしています。定番料理を数種作って4~5人で試食するという形ですね。味に関しては信用できる人しかいません」
優秀な人材を確保するために
ただ、シェフは皆タイ人。募集はもちろん、日常のコミュニケーションなど、日本人とは勝手が違うことは容易に想像できます。日本人でも良いスタッフを揃えるのが難しい昨今、どのように人材を確保しているのでしょうか。
「募集に関しては、人伝てだったり、外国人に強い業者経由だったり、色々ですね。日本人と決定的に違うところで言えば、例えば、住居探しの手伝いは必須です。外国人というだけで断られるケースも多いので。ウチの場合は「加瀬さんのとこなら……」と融通利かせてくれる、関係を築いている不動産屋があるので、割とスムーズではあります。内見も一緒に行きますね。
入社してきたスタッフとは、コミュニケーションを大切にしています。そもそも、文化が違うので、人間関係などで上手くいかないことも多い。私自身もなるべくタイ語で接するように努めていますし、時にはバーベキューしたりとか、とにかくチームとしての“和”が出来るように心がけています。
他には、年に一回2週間の長期休暇を設けて本国に帰る機会を作っていること。その時の飛行機代は会社持ちです」
現代風とエスニックが融合したオシャレな内装で入りやすさを、腕のあるタイ人シェフの本格タイ料理で高い満足度を、豊富なメニューラインアップで次への来店動機を……、好循環を生み出している『本格タイ料理バル プアン』。
成功の要因を辿っていくと、根底にはスタッフを大切にする細やかな心遣いがありました。