前講座で説明した鶏肉の品質を左右する「鮮度と温度管理の重要性」を踏まえ、鶏肉の仕入れについて解説していきます。
仕入れ業者の選定
仕入れ先の選択肢は、小売店や業務用スーパー、卸売業者など様々あります。まずは、それぞれの仕入れ先について、飲食店にとっての一般的なメリット・デメリットを整理します。
小売店(精肉店やスーパーなど)
精肉店やスーパーなどの小売店は、どんな地域にもあるので、最も気軽に利用できます。
メリット | 商品を直接見て選ぶことが出来る 小ロットで購入出来る |
デメリット | 卸売業者と比較して価格が高いことが多い 小売店が仕入れた商品から選ぶことになるので、鶏の各部位を望み通りの数量で揃えられないことが多い 焼鳥に必要な希少部位が揃わないことが多い |
業務用スーパー
飲食店などプロ向けの商品を取り扱うスーパーです。その場で支払い、商品持ち帰りが一般的。ただし、小売店ほど、どこの地域にもあるわけではありません。
メリット | プロ仕様の商品が多く、一般スーパーにない商品も並んでいる 小売店に比べて価格が安価 |
デメリット | メインの仕入れ先とした場合、都度持ち帰る量が多くなり、運搬時の温度管理が難しい 希少部位が揃わないことが多い |
食肉卸
一般的には、営業担当と商品の希望について事前に打合せをして、見積りを確認。合意の上、取引が始まります。掛売や配送に対応する業者もあり、利便性が高い仕入れ先です。
メリット | 小売店に比べて価格が安価 掛売や配送など便利な仕組みを利用できる場合が多い 営業担当が付く業者もあり、その場合、商品の相談や価格交渉がしやすい |
デメリット | 商品を直接見て選ぶことが出来ない 注文してから翌日に届くことが多い 2kgパックでの納品が多く、小ロットの注文に対応してくれない業者も多い 焼鳥に必要な希少部位が揃わない |
鶏肉専門卸
鶏肉専門卸は、丸鶏から解体しており、部位の品揃えも豊富。仕入れ先として選ぶ焼鳥店は多いものの、小規模な卸が多く、近年は廃業する業者も増え、数は少なくなってきています。
メリット | 自社で丸鶏を捌いているので鮮度が良い 部位の品揃えが豊富 配送してくれる業者もある |
デメリット | 小規模な業者は、作業室の温度管理・衛生管理を徹底していないことがあり、よく調べる必要がある 鶏の解体羽数が少ないと、部位によっては注文通りの数量を仕入れられないことがある |
焼鳥店ならではの仕入れ事情
仕入れ先のメリット・デメリットを解説しましたが、焼鳥店の場合、さらに特有の事情も加味しなくてはなりません。
多くの焼鳥店のメニューには、もも、ささみ、レバー、砂肝などの定番部位が並んでいますが、この定番部位だけでも、業者によっては希望数量を確保することが難しい場合もあります。
なぜなら、鶏1羽からとれる肉の重量は、部位ごとに違うからです。
例えば、もも肉は1羽に2枚(約600g)ついていますが、砂肝は1個(約30g)しかついていません。単純計算ですが、串1本40gとすると、もも肉は1羽から約15本の串が作れますが、砂肝は表面の固い銀皮を取り除くと歩留りが落ちるので、2羽分でやっと1串作れるということになります。焼鳥店が「もも肉3kg」「砂肝0.6kg」と発注した時、もも肉が約5羽分(3kg÷600g)に対して砂肝は20羽分(0.6kg÷30g)なので、注文を受ける業者は、その差15羽分(約9kg)のもも肉の売り先も確保しなければなりません。
砂肝を例に挙げましたが、他にも部位は様々あります。レバーは1羽に約80g、首皮は約20g、手羽先は約60g×2本、ヤゲンナンコツは約5gといったように、部位ごとに1羽からとれる重量は違います。その分、業者側は余剰部位が出ないように複雑な販売バランスを取る必要があるのです。
焼鳥店としては、欲しい部位、欲しい数量を安定して仕入れるのが理想ですが、一方で注文に柔軟に対応できる業者は限られています。
※各部位の重量は、プレコフーズ オリジナルブランド鶏の平均値です。
「部位ごと」か「丸鶏」か
仕入れる鶏肉の形状について
焼鳥店は、部位ごとに仕入れることが一般的ですが、「丸鶏」で仕入れるという方法もあります。丸鶏とは、部位ごとに切り分ける前の一羽丸ごとの状態を示す呼称で、さらに「ト体」と「中抜き」の2種類があります。
「ト体」とは、鶏の血を抜き(放血)・羽を抜いた(脱羽)だけの、内臓などは身体の中に入っている状態。「中抜き」とは、ト体から内臓を除去した状態のことを言います。
つまり、鶏肉を仕入れる時の選択肢としては、
①丸鶏(ト体)
②丸鶏(中抜き)
③部位ごと
の3つがあるということになります。
前講座で説明した通り「鶏肉は解体してから鮮度劣化が著しくなる」ので、鮮度の高さで言えば「ト体」「中抜き」「部位ごと」の順となります。
① 丸鶏(ト体)での仕入れ
名店と呼ばれる店をはじめ、一部の焼鳥店だけの例になりますが、ト体を仕入れ、店内でスタッフが解体し、串打ちを行う店舗もあります。こうした店が取り扱う鶏肉は鮮度が高いので、相応の高い評価を受けています。
そして、もう一つ高い評価を受けているのが「希少部位が味わえる」という点です。ここで言う希少部位とは、腹身や食道、背肝などといった、あまり知られていない、いわば超希少部位も含まれます。これらは、1串打つのに4~5羽必要なほど、わずかしかとれない部位。鶏肉専門卸でも安定して販売できる業者は非常に少なく、焼鳥店のメニューに並ぶことも稀です。逆を言えば、メニューに加えることが出来れば、他店との差別化を図る決め手となり得るのです。
ただし、鶏肉をト体で仕入れて解体するためには「食鳥処理業※」の許可が必要となり、仕入れの選択肢としてはハードルが極めて高いと言えます。
② 丸鶏(中抜き)の仕入れ
丸鶏は、中抜きであれば「食鳥処理業」の許可がなくても、仕入れることが出来ますが、焼鳥店にとって内臓は不可欠。別途、必要な内臓の部位を仕入れなければなりません。
また、ト体同様、中抜きで仕入れる際も店内で部位ごとに切り分けなければならず、相応の高度な技術が必要になります
③ 部位ごとの仕入れ
丸鶏を仕入れて店内で捌くには、ト体であれ、中抜きであれ、相応の資格や技術が必要です。そして、もちろん手間もかかるので、大多数の焼鳥店は部位ごとに注文して仕入れています。
鶏肉専門卸は、産地からト体で仕入れ、自社内で解体して部位ごとに販売しており、前述したような超希少部位を取り扱っていることもあります。ただし、小規模の事業者が多く、解体羽数が少ないために注文に対して柔軟に対応できるとは限りません。また、中には作業室の温度管理・衛生管理を徹底していない業者もあるので、仕入れ先を選ぶ時は、利便性や品揃え、規模の大きさはもちろん、どのような設備・体制で作業しているかまで、詳細まで見てから判断すると良いでしょう。
鶏肉店として創業し、成長・拡大を続ける総合食品卸プレコフーズ |
プレコフーズは、街の小さな鶏肉店として創業。首都圏30,000軒のお客様と取引する総合食品卸に成長した今日でも、鶏にこだわり続けている言わば“鶏のスペシャリスト”です。 オリジナルブランド鶏を産地からト体で入荷。1日に約2,300羽(2023年8月実績)ものト体を自社の低温管理・衛生管理を徹底した設備で手捌き解体し、抜群の鮮度でお届けしています。 また、鶏肉の品質や部位の品揃えに加え、1,000円からのご注文で即日に無料配送など、利便性においても、お客様から高い評価をいただいています。その上、鶏肉に対する深い知識を持つ営業担当者がつき、メニューや商品の相談にも柔軟に対応しています。 |