ブロイラー、銘柄鶏、地鶏。どの鶏を選ぶ場合も、良い鶏を仕入れるために大切なのが『鮮度』。そして鮮度を維持するのに不可欠なのが『温度管理』です。
鮮度の良し悪しが鶏肉の判断基準
鶏肉の柔らかで程よい弾力のある食感、ジューシーで口の中いっぱいに広がる旨みは、新鮮だからこそ味わえるもの。地鶏や銘柄鶏など、良い鶏肉を使ったとしても、鮮度が悪ければ、焼鳥は美味しく仕上がりません。焼鳥を美味しく仕上げるためには「串打ち」や「焼き」などの技術も必要ですが、まずは使用する鶏肉の「鮮度」が基本となります。
特に若鶏は、農林水産省が定める『食鶏の取引規格の品質標準』でも等級区分の判断基準となるほど、鮮度の良し悪しが重要視されています。
鮮度が重要な理由
そもそも鶏肉は、牛豚に比べて熟成の早い食肉です。
熟成とは、低温で保存することで酵素によりタンパク質が分解され、肉が柔らかくなると共に、旨味成分が増すこと。熟成によって、肉は美味しくなるのです。
鶏肉が熟成するまでの期間は、ト殺後4℃の保存で12〜24時間とされています。牛が8〜10日、豚が4〜6日なので、鶏肉は牛豚に比べると、なるべく早く食べた方が美味しいことが分かります。
鶏肉は解体してから鮮度劣化がより著しくなる
鶏肉は、丸鶏(解体する前の一羽丸ごとの状態)をそれぞれの部位へと解体すると、さらに鮮度の劣化が著しくなります。
これは、部位ごとに切り分けることで、空気に触れる面積が広くなるからです。
鮮度を保持するためには低温での保存が最重要
空気中には、さまざまな雑菌が浮遊しています。品質劣化は、これらの雑菌が肉の表面に付着し増殖することで進みます。雑菌の多くは、10℃以下の温度帯で増殖しにくくなり、0℃になるとほとんど活動できないと言われています。そのため、品質を保持するためには、低温で保存することが重要。食品衛生法でも「食肉は、10℃以下で保存しなければならない」と定められています。
加工作業も低温環境で行われていることが理想
鶏肉の保存だけではなく、丸鶏から各部位への解体などの加工作業も低温で管理された室内で行うのが理想です。全国食肉事業協同組合連合会によると「加工室の温度を15℃以下に温度管理する」とされています。
プレコフーズは、11℃低温クリーンルームで丸鶏を解体・加工 |
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鮮度の良い鶏肉は「見る」「嗅ぐ」でも判断できる
低温で管理している鶏肉と、していない鶏肉の鮮度の違いは、雑菌数という科学的データだけではなく、「見る」「嗅ぐ」などといった人間の五感からでも分かります。
財団法人東京顕微鏡院による実験では、簡易包装した鶏肉(もも肉200g)を0℃、4℃、10℃で保存した時の生菌数の変化を検証するとともに、官能評価を実施。この官能評価は、色調・外観・ドリップ・臭気について行い、1項目でも異常が見られれば食用不可とするものです。
実験では、温度帯が高い方に比べて、低い方が加食期間が長いことを明らかにしています。加えて、官能評価で食用不可と判断した食肉の生菌数を調べた結果、増加が顕著であることから「食用の判定は官能評価でも十分に可能と考えられる」と結論付けています。
《出典》中川弘・星川理恵・岩田朋子・伊藤武・坂井千三,食肉の保存温度と微生物の消長,日本食品微生物学会雑誌,1999年16巻2号,日本食品微生物学会
鮮度の良い鶏肉の見分け方
以下に、「見る」ことで鶏肉の鮮度を測るポイントを解説します。
鶏肉の種類や部位によって違いはありますが、鮮度が良い鶏肉は、透明感がある鮮やかなピンク色をしています。逆に鮮度が良くないものは、光沢がなく濁ったような色合いに見えます。
新鮮な鶏肉は、水分を多く含んでいるため、ふっくらと丸みがかったような形状で、表面が張っているような印象を受けます。表面を指で押してみると、程よく押し返してくるような弾力を感じます。
皮を見てみると、新鮮な鶏肉ほど、毛穴が盛り上がっているのが分かります。逆に、鮮度が落ちているものは、毛穴に盛り上がりがないので、表面が平らに見えます。
鶏肉は牛豚に比べて、肉に含まれる水分が多く、ドリップが出やすい食肉です。ドリップとは、食肉から流れ出てくる赤い液体。これは、細胞組織が壊れて水分として流れ出てくるもので、旨味成分も含まれています。つまり、ドリップが出れば出るほど美味しさは低下するということになります。新鮮な鶏肉でも少量のドリップが出る場合もありますが、その量が多い場合は注意が必要です。
酸化という劣化原因
丸鶏から部位に切り分けられ、長く空気に触れると、劣化はさらに進みます。
その原因が酸化です。たとえ、鶏肉を低温で保存していても、酸素に長い時間触れ続けることで鶏肉に含まれる脂質は酸化します。脂質が酸化して生じる物質は、人にとって不快な臭いの元であり、出来るだけ空気に触れる時間が短い方が望ましいということになります。
こうした理由から、丸鶏から部位に切り分けられてからの期間が短い方が、劣化が少ないと言えます。
繰り返しになりますが、鶏肉を仕入れる時に重要なのは鮮度、そして手元に届くまで低温管理が徹底されていたか、です。
そのためには、鶏肉が店に届くまでにどのような過程を経ているのか、仕入れ先が鶏肉をどのように扱っているのかを知ることが必要です。
つまり、供給先の温度管理体制や流通の工程を知ることが重要な尺度となるのです。