本講座では、焼きの基本と熱源「炭・電気・ガス」について解説します。
焼きの基本は「遠火の強火」
焼鳥は、外側はパリッと中はジューシーに焼き上げるのが理想とされています。
そのためには、高温で表面を素早く焼き、中の水分を閉じ込めなければなりません。
直火を当てず、しかも強い熱を加える、いわゆる「遠火の強火」で焼き上げる必要があります。
焼鳥の焼きに不可欠な赤外線
直火を当てず遠火でも加熱できるのは、電磁波の一種「赤外線」による効果です。
赤外線は、波長の長さによって遠赤外線と近赤外線に分かれます。遠赤外線は、表面から深さ1mmまでに吸収されるので表面をパリッと焼き上げる効果があり、近赤外線は表面から2mm~3mmまでに吸収されるので、より肉の中を加熱するのに適しています。
焼鳥を美味しく焼くためには、このうち遠赤外線の効果が欠かせません。
炭・電気・ガスの3種では、[ 炭 > ガス > 電気 ]の順で放射量が大きいと言われています。
美味しさを追求するなら炭火
元々「遠火の強火」は、炭火焼のコツとして生まれた言葉です。
炭の温度は、燃焼時800℃以上、十分な空気量があれば1000℃以上に上昇。この大きい熱量と、高い遠赤外線効果によって、食材を遠ざけていても強い熱を加えることが可能になります。
加えて、炭火で焼いた焼鳥は特有の香ばしい香りを纏います。この香りは、鶏肉から出る脂が炭の上に落ちて発生する燻煙によるものなので、電気・ガスで焼いても付くことはありません。
PRECO焼鳥学では、美味しい焼鳥を追求するのであれば、炭を選ぶのが最善と考えます。
ガス・電気という選択肢
ただし、炭を店舗で使う時は、焼き台の大きさによって他の用途のダクトと繋がっていない専用ダクトを設置しなければならない場合があります(※1)。通常、飲食店は厨房設備に排気ダクトが必要ですが、さらに1本増設する分イニシャルコストが上昇します。加えて、炭のランニングコストは、電気およびガスよりも高額です。
電気およびガス気は、火力が炭に及ばないというのが通説でしたが、近年では炭火の焼き上がりに近づけるために、1000℃以上の高温に達する焼き台や遠赤外線効果を高めた焼き台なども販売されています。
焼き台を選ぶ時は、業態やお店の規模、客単価など、お店のコンセプトを考慮しながら、コスト・使い勝手・焼き上がりを比較することが重要です。
(※1)「火災予防条例」は、総務省消防庁が定めた「火災予防条例(例)」に基づき、各市区町村がそれぞれ制定しているため、所轄に確認する必要があります。